民法9
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Elenco編集部監修・編集
公開 2026.05.07最終更新 2026.05.18

民法424条 詐害行為取消権——改正後の本則と特則(424条の2〜9)の整理

この記事のポイント

民法424条本則と、改正で明文化された相当価格処分(424条の2)・偏頗行為(424条の3)・過大代物弁済(424条の4)・転得者(424条の5)の規律を整理する。

民法424条は債権者代位権と並ぶ責任財産保全制度であり、2017年改正で本則のほかに相当価格処分・偏頗行為・過大代物弁済・転得者など複数の特則が明文化された。改正前は判例の蓄積で運用されていた領域が条文として整理されたため、答案では本則と特則のどちらで処理するかを早期に振り分けるのが重要になる。

①424条本則の要件、②改正後424条の2〜4の特則(相当価格処分・偏頗行為・過大代物弁済)、③転得者に対する取消請求(424条の5)、④効果と論証の組み立て方、の順で扱う。並行する責任財産保全制度は 民法423条 債権者代位権 を、相殺との関係は 民法505条 相殺 を併読してほしい。

424条本則の要件

条文
民法424条(詐害行為取消請求)

1項 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(受益者)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

本則の要件は、①被保全債権の存在(原則として詐害行為前に発生したもの)、②債務者の詐害行為(責任財産を減少させる法律行為)、③債務者の詐害意思、④受益者の悪意、の4つに整理される。詐害意思については『債権者を害することを知ってした』との文言が用いられており、害する積極的意図までは要求しないと整理されることが多い。

改正後の特則(424条の2〜4)

改正後の民法は、本則のみでは射程が読みにくかった3つの場面について、それぞれ特則を置いている。いずれも、本則よりも要件を加重して取消しを制限する方向で整理されている点が共通する。

424条の2〜4の整理

相当価格処分(424条の2)

不動産を相当の対価で売却するなど、処分の前後で総額が等価である行為について、①隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせるものであること、②債務者が処分時に隠匿等の意思を有していたこと、③受益者が処分時にその意思を知っていたこと、の3つを要件として取消しを認める。総額に変動がない以上、原則として詐害行為性が否定されることを前提に、隠匿等のおそれが具体化した場面に限って取消しを認める建付けである。

偏頗行為(424条の3)

既存債務についての担保供与・債務消滅行為(弁済等)について、①支払不能時にされたこと、②債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図を持って行われたこと、を要件とする。本来の債務の履行は原則として詐害行為に当たらないことを前提に、特定債権者への偏頗な弁済を取消しの対象とする条文構造である。

過大代物弁済等(424条の4)

代物弁済等として給付された物の価額が消滅させる債務の額より過大である場合について、過大な部分に限って取消しを認める旨を定める。本則の全部取消しとは効果が異なる点に注意したい。

転得者に対する取消請求(424条の5)

受益者からさらに転得した者に対する取消請求は、本則・特則の要件を満たすことに加えて、転得者が転得の時点で債務者が詐害行為をしたことを知っていたことを要件とする(424条の5)。複数の転得者がある場合も、各転得者ごとに、当該転得者の転得時の悪意が要件となる構造である。

民法424条 詐害行為取消請求の判定フロー
民法424条 詐害行為取消請求の判定行為類型を特定(責任財産減少/相当価格処分/偏頗行為/代物弁済)適用条文を選択(本則424条 / 424条の2 / 3 / 4)該当条文の要件(詐害意思/受益者悪意/支払不能/通謀等)を当てはめる転得者がいる場合は424条の5(各転得者の転得時悪意)

効果と関連条文(424条の6〜9・425条以下)

改正後の規律は、取消請求の方法・被告適格・取消しの範囲・直接交付の請求などを424条の6〜9で整理しており、効果については425条以下が、取消しの効力が債務者および全債権者にも及ぶ旨を定める枠組みを採用している。改正前は相対効説と絶対効説の対立があった領域だが、改正後はすべての債権者に効力が及ぶ建付けで整理されている。

論証の組み立て方

424条 論証の型

請求権の特定

本件で問題となるのは、債権者Xが、債務者Aの〇〇行為について、受益者Bに対する詐害行為取消請求が認められるかである。

行為類型の振り分け

本件行為が、責任財産を減少させる一般的な詐害行為(本則424条)か、相当価格処分(424条の2)か、偏頗行為(424条の3)か、過大代物弁済(424条の4)か、を最初に振り分ける。

要件の検討

選択した条文の要件を順に検討する。本則であれば被保全債権・詐害行為・詐害意思・受益者の悪意、特則であればそれぞれの加重された要件(隠匿等のおそれ、支払不能、通謀的意図、過大性)を当てはめる。

転得者の検討

転得者がいる場合は、本則・特則の要件に加え、当該転得者の転得時の悪意(424条の5)を別途検討する。

当てはめ

本件では、〇〇という事情から、〇〇条の要件が満たされる(あるいは満たされない)。

結論と効果

以上から、Xの取消請求は認められる(あるいは認められない)。認められる場合の効果は、全部取消しか過大部分取消しかを意識し、425条以下の効力範囲を踏まえて結論をまとめる。

よくある誤解

よくある質問

Q. 相当価格処分はなぜ原則として詐害行為に当たらないのか

A.処分の対価として相当な金銭が責任財産に入る以上、総額として責任財産は減少しないという評価が出発点になる。

もっとも、金銭への形態変更が隠匿等のおそれを現に生じさせる場合があり、424条の2はその場面に限って取消しを認める枠組みを採っている。

Q. 偏頗行為(弁済・担保供与)はどこで線を引くか

A.424条の3は、支払不能時にされたこと、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図を有していたこと、の2要件を求める。

本来の債務の履行であることを前提に、特定債権者への偏頗を救済する構造になっている。

Q. 転得者にどうやって対抗するか

A.424条の5により、本則・特則の要件を満たすことに加えて、転得者の転得時の悪意が要件となる。

複数の転得者がある場合は、各転得者ごとに悪意を判断する。

Q. 過大な代物弁済等で取り消せる範囲はどこまでか

A.424条の4は、給付された物の価額が消滅する債務の額を超える過大な部分について取消しを認める旨を定める。

本則の全部取消しと効果が異なる点に注意したい。

Q. 取消しの効果は誰に及ぶか

A.改正後の規律は、取消しの効果が債務者および全債権者に及ぶ建付けで整理されている。

改正前の相対効説に立った答案構成にならないよう、現行条文の効力範囲を踏まえる必要がある。

並行する責任財産保全制度は 民法423条 債権者代位権、相殺との関係は 民法505条 相殺 を併読してほしい。

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