予備試験を3か月程度で目指す場合、全科目を均等に積み上げる時間はない。どこに時間を割き、どこを最低限に抑えるかという配分設計が、合否に直結する。本稿で、短期戦略の組み立て方を整理する。
扱うのは、①予備試験の構造、②短答と論文の比率、③科目ごとの濃淡の付け方、④インプットとアウトプットの比率、⑤1日のタイムテーブル、の順である。
予備試験の構造
予備試験は、短答式・論文式・口述式の3段階構造である。短答式は基本7科目に加え一般教養まで含む広い知識を問う。論文式は基本7科目に加え、選択科目、法律実務基礎科目(民事・刑事)まで含み、論述力が問われる。口述式は論文合格者を対象に短期間で実施される。 短期戦略では、まずこの3段階のうち、短答と論文の双方を最低限通すために必要な配分を組む。
短答と論文の比率
短期戦略では、論文をある程度書けるレベルまで引き上げないと、合格ラインに到達しない。インプットを完璧にしてから論文に入る、という順序ではなく、早い段階から論文の処理手順に触れ、インプットとアウトプットを並行で回す方が効率がよい。
時間配分の目安
短答対策
判例・条文の正確な知識と、選択肢を絞り込むトレーニングが中心となる。過去問演習を軸に、間違えた論点だけ集中的に補強する流れで進める。
論文対策
論証の型を理解し、過去問を時間を計って解く。書いた答案を判例・条文と照らして振り返るサイクルが、最も力がつく学習である。
選択科目・実務基礎
短期戦略では深追いせず、出題傾向と頻出論点に絞って必要最低限の知識・処理手順を押さえる。完璧を目指さない判断が必要となる。
科目ごとの濃淡
全科目を均等に扱う時間はないため、(i) 配点や出題量で重みのある科目、(ii) 自分の理解の進度、(iii) 過去問での得点獲得の見通し、を踏まえて配分を組む。民法・刑法・憲法は基本7科目のなかでも論点の量と頻出度が大きく、ここを最低限のレベルに引き上げることが優先される。 商法・行政法・民訴・刑訴は、3か月戦略では論点を絞り、典型処理を確実に押さえる方針が現実的である。
インプットとアウトプットの比率
短期戦略でやってはいけないのは、基本書を1冊目から最後まで通読することにこだわる進め方である。短期戦略では、インプットを目的にせず、論文・短答の演習で出会った論点を補強する形で基本書・論証集を使う方が、定着が早い。インプットとアウトプットの比率は、3対7程度を目安にして、過去問演習を中心に据えるイメージが現実的である。
1日のタイムテーブル
1日の時間配分例
朝(2〜3時間)
短答過去問の演習と、間違えた論点の確認。短時間で集中して問題に当たり、論点単位で振り返る。
昼(2〜3時間)
論文過去問の答案構成と、論証の型の読み込み。実際に書く時間は週に何日か確保し、それ以外の日は構成までで終わらせる、という配分でも力はつく。
夜(1〜2時間)
扱った論点の条文・判例の確認と、当日の振り返りメモ。寝る前に短時間で論証を音読するだけでも、定着が違ってくる。
よくある質問
Q. 3か月で本当に合格できるか
A.基礎学習の蓄積や日々の学習可能時間によって個人差が大きい領域である。
短期戦略はあくまで配分の考え方であり、合格保証ではない。短期で受験する場合は、合格水準まで届かなくとも翌年以降への布石として何を残せるかを並行して考えると、無理がない。
Q. 捨てる科目は本当に作っていいのか
A.完全に捨てるというより、優先順位を下げて典型処理だけで凌ぐ、という発想が現実的である。
配点や出題傾向、自分の習熟度を踏まえて、深追いしない科目を意識的に決めることで、主軸科目に時間を投下できる。
Q. 基本書は読まなくてよいか
A.完全に不要というわけではないが、短期戦略では通読を目的にせず、論文・短答演習で必要となった範囲をピンポイントで読む方が効率がよい。
論点単位で読み返すことで、論証や事例との接続が強くなる。
Q. 短答と論文はどちらを優先するか
A.並行で進めるのが基本である。
短答だけ仕上げてから論文、という順序にすると、論文の処理手順を身につける時間が不足する。早い段階から論文の型に触れ、短答演習で論点を補強する流れが安定する。